森翔吾です。
アメリカがイランの
「淡水化施設」を
空爆で破壊しました。
日本で言う、浄水場です。
でもここは、
川が一本もない砂漠の中東エリア。
年間に雨が降るのは
数えるほどしかありません。
この施設がなければ、
人は生きていけません。
このアメリカの攻撃に対して、
イランは報復として、
湾岸エリアにある
バーレーンの淡水化施設を
ドローンで攻撃しました。
そしてイラン側は、
今後も淡水化施設を
標的にしていく、と
公然と示唆しています。
ただ、
山も川もあり、
水に困ったことのない
日本にいると、
これがどれだけやばいことか、
ピンとこないかもしれません。
でも、
これはドバイが
終わるかもしれない、
という話です。
ミサイルでもない。
不動産暴落でもない。
生命に一番関わる、
水の問題です。

あの車窓に映っていたもの
2年前、
家族でドバイを旅行しました。
空港近くデイラから
タクシーに乗って、

ダウンタウン、マリーナ、
そしてアブダビへ。
アブダビではサアディヤット島の
セント・レジスに泊まりました。
穏やかなビーチで
娘たちと遊びました。
2026年2月28日、
そのサアディヤット島に
イランのミサイル迎撃破片が
落下しました。
UAE国防省が公式に
地名を発表しています。
あのビーチに、です。
そしてマリーナに向かう
タクシーの車窓に
流れていった、
あの赤白の煙突群。

あの時は気にも留めませんでした。
ただ、
高層ビル群の隣に
無機質な煙突がドン、ドンと
そびえ立っている風景には、
このドバイの表と裏を
感じました。
あれが、
350万人の命の水を
作っている場所でした。
楽しかった思い出の映像の中に
「脅威」を見つけている自分がいます。
時代が確実に悪い方に
動いていることを、
こういう形で実感するとは
思いませんでした。
ドバイの水の99%は「1カ所」から来ている
ドバイには川も湖もありません。
砂漠です。
そのため、
「海水を淡水に変えて水を供給している。」
これは昔から知っていました。
ただ、
その淡水化の仕組みを
詳しく調べてみて驚きました。
というのも、
水の99%は、「ジュベル・アリ淡水化コンプレックス」という1カ所の施設から供給されている。
という事実を知ったからです。
海水を淡水に変える施設です。
43基のユニットが、
海岸線に3km以上にわたって
むき出しで並んでいます。

世界最大の海水淡水化施設。
350万人の命綱が、
ここ1カ所に集中しています。
ということは、
万が一ここが攻撃され
破壊された場合、
ドバイの水は止まる
ということです。
もちろん飲み水としては
推奨されておらず、
蛇口から出るのは生活用水です。
でも、
シャワーもトイレもキッチンも、
全部この水です。
夏のドバイで水が止まるとはどういうことか
日本のお盆の蒸し暑さを
想像してください。
あの40度近くにもなる不快な熱気。
ドバイでは、
あれ以上の暑さが半年近く続きます。
昼間の最高気温は
45度を超える日もある。
そして夜も気温が下がらない。
夜間でも35度超が普通にあります。
海沿いのマリーナを夜散歩するだけで
汗びしょびしょになります。
湿度は80〜90%。
僕は実際に経験していますが、
そんな街で、
蛇口をひねっても水が出てこない。
これが1日でもあったら大問題です。
それを知った瞬間、
これは本当にやばいことだと
思いました。
妻と出会って10年近く、
それからドバイに通い続けてきましたが、
こんなことが起こるなんて
考えもしませんでした。
前例が作られた——「水インフラ攻撃OK」の時代
冒頭でも伝えましたが、
3月7日、
米国がイランのケシュム島にある
淡水化施設を空爆、破壊しました。
周辺30の村で水が断絶しています。
イラン外相はX(旧Twitter)で
「先例を作ったのは米国だ」と発信。
The U.S. committed a blatant and desperate crime by attacking a freshwater desalination plant on Qeshm Island. Water supply in 30 villages has been impacted.
Attacking Iran’s infrastructure is a dangerous move with grave consequences. The U.S. set this precedent, not Iran.
— Seyed Abbas Araghchi (@araghchi) March 7, 2026
翌3月8日、
イランはバーレーンの淡水化施設を
ドローンで攻撃しました。
湾岸諸国の淡水化施設への
直接攻撃が公式確認されたのは、
これが初めてです。
これがすごく危険だなと
思ったのは、
「水インフラを攻撃してもいい」という前例が、双方で成立してしまった。
という事実です。
ここで重要なのは、
同じ「水インフラ攻撃」でも、
受けるダメージの大きさが
まったく違うという点です。
イランには川もダムもある。
ケシュム島が破壊されても、
国全体としては死にません。
しかしドバイは淡水化施設に
100%依存しています。
同じ「水インフラ攻撃」でも、
意味が全く違います。
しかも、
ジュベル・アリ淡水化プラントから
ドバイ市の繁華街マリーナ地区まで
わずか5〜8km。
3月2日のイランの攻撃は
ジュベル・アリ港に着弾しました。
プラントまで、
あと20kmの距離でした。
備蓄「90日分」は本当か
「でも、水の備蓄があるんでしょう?」
と思うかもしれません。
UAE政府は、
砂漠の地下に水を貯めておいて、
いざという時に汲み上げる仕組みを
整備してきました。
計画上は90日分の水を
地下に蓄えているとされています。
ただし、
ここに大きな落とし穴があります。
ジュベル・アリの施設は、
水と電気を同時に作っています。
つまり、
この施設が攻撃されると
水だけでなく電気も止まる。
電気が止まれば、
地下に貯めてある水を
汲み上げるポンプも動きません。
備蓄があっても、
汲み上げる手段がなくなる
可能性があるということです。
独立した調査では、
実際にすぐ使える水は
わずか2〜5日分ではないかという
指摘もあります。
CIAの分析では、
主要設備が破壊された場合
「数ヶ月にわたって停止する」
可能性があるとされています。
さらに、
万が一プラントが破壊された場合、
復旧は簡単ではありません。
淡水化施設は、
海水を取り込むパイプ、
ポンプ、発電設備、ろ過装置など、
何百もの部品が連動して動く
複雑なシステムです。
どこか1カ所が壊れただけでも
全体が止まる。
仮に主要部分が破壊された場合、
復旧には数ヶ月から数年かかるとも
言われています。
数日で直せるようなものでは
ありません。
45度の炎天下で、
2〜5日後に水が止まる。
いつ復旧するかもわからない。
もしこれが現実になったら、
富裕層はプライベートジェットで
逃げられるでしょう。
でも、
45度の炎天下に
エアコンもないバスで
建設現場に運ばれていく
出稼ぎ労働者たちは——
僕はドバイで何度も
見た光景ですが——
どこにも逃げられません。
これがもし起こったら、
あのドバイがかなり悲惨な状況に
なることは間違いないと思います。
ミサイルとドローンを温存するイラン——これは短期戦では終わらない
前回の記事でも書いたことですが、
僕がこの戦争で
一番不気味だと感じているのは、
イランがまだ本気を出していない
ということです。
イラン国防省の報道官は
3月3日、こう発言しています。
「我々は、敵が想定しているより長く攻撃的防衛を継続する能力がある。我々の先進兵器と装備のすべてを、最初から投入するつもりはない」
さらに3月5日には、
IRGC(イラン革命防衛隊)の
報道官も
「新たな兵器とイニシアチブが控えている。まだ大規模に展開していない」
と発言しています。
イラン側の一方的な発言だから
強がっているだけなんじゃないか?
と最初は思いました。
実際、
初日の米国・イスラエルの攻撃で、
イラン側は想定以上のダメージを
受けていると思います。
初日だけで相当やられている。
だから「余裕を持って温存している」
なんて言うつもりはありません。
ただ、
「何を言っているか」ではなく
「何を出してきているか」という
行動ベースで見ると、
話が変わってきます。
イラン側、
今の段階で表に出ている
攻撃の中心は、
旧型のShahed-136系です。
プロペラ式で時速185km、
1機あたり2〜5万ドルの
「安くて遅い使い捨て兵器」。
しかしイランには、
まだ切っていないカードがあります。
Shahed-238——
ジェットエンジン搭載の新型ドローン。
時速500〜600km。
旧型とは速度が別次元です。
一部が使用されたとの情報も
ありますが、
大規模な投入は確認されていません。
そして、
ファタハ(Fattah)シリーズ——
イランの「切り札」とされる
極超音速ミサイル。
マッハ13〜15で飛び、
大気圏内で不規則に
軌道を変えるため、
既存の防空システムでは迎撃が
極めて難しいとされています。
さらに、
イランは弾道ミサイルを
現時点で2,000発以上
保有しているとされ、
ドローンは
月500機ペースで増産可能。
一方で、
迎撃する側のミサイルは
製造に数年かかるものもあり、
開戦4日目の時点で、
少なくとも1つの湾岸同盟国が
すでに迎撃弾不足に
直面しているとの報道もありました。
前回も書いた通り、
この戦争の本質は
「どこに何発落ちたか」ではなく、
安い旧型ドローンの生産速度と、
高価な迎撃弾の補充速度の
どちらが先に尽きるかです。
そしてもし旧型で
迎撃弾を削ったあとに、
温存していた高速型や
弾道ミサイルに切り替えてきたら、
話はまったく変わります。
その先に、
フェンス1枚でむき出しのまま
海岸線に並ぶ淡水化プラントがある。

この戦争は短期間では
終わらない可能性がある。
そして、
長引けば長引くほど、
ドバイの水が止まるリスクは
上がっていく。
これが、
僕が「本当にやばい」と
感じた理由です。
僕ならもう行かない
正直に言います。
僕自身、
水が止まる可能性がある場所へ、
ビジネスやリゾートで
宿泊しに行くかと聞かれたら、
答えはNoです。
特に情報の早い
富裕層や投資家が、
この事実を知ったらどうなるか。
淡水化施設が
1カ所に集中していること。
前例が作られたこと。
消耗戦が長引く構造であること。
これを知った上で、
何十億もの資産を
ドバイに置き続けるか。
家族を住まわせるか。
たとえ停戦しても、
ドバイに本格的に投資する人は
減るんじゃないかと思います。
「攻撃された街」
ではなく、
「水が止まりうる構造を持った街」
だともう
バレてしまったからです。
もちろん、
情勢が安定した後に
旅行で行く程度なら
まだいいと思います。
でも、
長期で住む、
事業の拠点を置く、
不動産を買う——
そういう判断をするなら、
この構造的リスクは
無視できません。
もちろん、
これが本当に現実になるかは
わかりません。
ならないかもしれない。
ただ、
僕はいつも
一番ネガティブなシナリオを
想定して動くタイプです。
ビクビクしながら
石橋を叩いてわたるタイプです。
最悪を頭に入れた上で
選択肢を持っておく——
それが自分の生き方です。
実は今回のドバイの件と
似た経験があります。
僕は今ロシアに住んでいますが、
今から5年前。
ウクライナの国境線に
ロシア軍が集結し始めた時に、
「もしロシアで戦争が起きたら、
どこかに避難する
必要があるかもしれない」
と考えて、
ドバイのビザを取るために
現地で会社を作りました。
2021年の11月。
戦争が始まる3ヶ月前でした。
あの時、
周りの誰も「戦争が起こる」
なんて言っていませんでした。
でも起きた。
結果的にはロシア本土が
深刻な状況にはならず、
ドバイへ住むことは
ありませんでした。
その「避難先」に選んでいたドバイに、
今こうしてミサイルが飛んできている。
正直、とても複雑な気持ちです。
でも、
選択肢を持っていたことで、
精神的な余裕は全然違いました。
今回も同じです。
この記事に書いたことが
現実にならないのが一番いい。
でも、
知っておいて損はない
そう思います。
今日はここまで。
それでは。
