森翔吾です。
イランの戦争が始まり、
1ヶ月が経ちました。
僕が過去に書いた記事、
・なぜ?イランのミサイルで「安全神話が崩壊」
・ドバイ不動産は暴落するのか?
・ドバイから「水」が消える日。
・イランの狙いは「長期消耗戦」。
これらの予想は、
ほぼその通りになりました。
そして、
今日はさらに深掘りします。
なぜこうなったのか。
そして今後どうなるのか。
直近のニュースだけでも、
事態が止まる気配はありません。
3月29日、
クウェートでは淡水化プラントに
ミサイルが着弾しました。
インド人労働者が1名
死亡しています。
飲み水が標的になりました。
同じ朝、
トランプ大統領が、
イギリス紙Financial Timesの
インタビューでこう言いました。
「ハールク島を奪うかもしれないし、奪わないかもしれない」
ハールク島。(Kharg Island)
イランの石油輸出の90%が集中する
ペルシャ湾に浮かぶ小さな島です。

米軍内部では、この島への
地上作戦の議論も始まっています。
しかし、
アメリカの世論調査では、
地上戦への支持はわずか20%で
70%以上が反対しています。
空爆では終わらない。
でも地上戦には
国民の78%が反対している。
出口が、見えません。
そもそも、
なぜアメリカは
この泥沼に足を踏み入れたのか。
答えは「成功体験」にあります。
2026年1月3日、
アメリカはベネズエラを
150分で制圧しました。
この成功が、
イランへの過信を生みました。
今日はその全構図を、
数字で解説します。
長い記事になります。
でも、
これを読み終えたとき、
今起きていることの意味が、
はっきりと見えるはずです。
第1章:ベネズエラは「予行演習」だった
2026年1月3日、午前2時。
「断固たる決意作戦
(Operation Absolute Resolve)」
が始まりました。
150機以上の航空機が、
20の基地から同時発進しました。
サイバー攻撃で、
ベネズエラの首都
カラカスを停電させ、
闇に紛れて突入しました。
作戦完了まで、約150分。
BBCが報道した数字です。

ただしこれは
「当日」だけの話ではありません。
CIAが5ヶ月前から、
カラカスに潜入していました。
中堅軍人を内部から切り崩し、
組織を骨抜きにしていました。
軍が戦う前に、
すでに崩れていたのです。
ちなみに、
このベネズエラ介入には、
3つの戦略的目的がありました。
目的①:代替石油の事前確保
ホルムズ海峡が閉鎖される前に、
別の石油源を確保する
必要がありました。
トランプは言っています。
「8,000万バレルの石油を手に入れた」
イランを攻撃する前に、
燃料の補給路を
押さえていたのです。
目的②:「迅速な成功」という政治的実績づくり
アメリカのシンクタンク
「クインシー研究所」
が運営するメディア、
リスポンシブル・ステートクラフトは
こう分析しています。
「カラカスのクーデターはテヘランとの戦争に対する保険の支払いだ」
150分の成功を国民に見せることで、
「次もすぐ終わる」という
空気を作ろうとしていました。
目的③:イランのドローン製造拠点の除去
そしてあまり語られていませんが
実はベネズエラには当時、
イランが湾岸諸国を苦しめている
ドローン「シャヘド136」の
工場がありました。
僕も調べるまで知らなかったのですが、
ベネズエラへの攻撃と
今回のイラン戦争は、
実は密接につながっていました。
ベネズエラ・マラカイの
エル・リベルタドール空軍基地に、
シャヘド136の変種「サモラV-1」の
製造ラインがありました。
ベネズエラ国内で生産されていた、
イランのドローンです。
これを先に潰す必要がありました。
そしてその構図は、2ヶ月後にも続きます。
そして3月18日、
APの報道でベネズエラの石油制裁緩和が
明らかになりました。
ベネズエラの石油で、
イラン戦争中のエネルギーを
補填する構図です。
1月のベネズエラ石油奪取。
3月末頃のハールク島発言。
石油を確保してから攻撃し、
また石油を狙う。
「ベネズエラとイランは別の話」
と思っている人が多いかもしれませんが、
実は1つの作戦の
前半と後半ということです。
ただ、
この「前半」の成功が元で
「後半も行ける」
という過信を生みました。
でもそれは致命的な誤算となって
跳ね返ってきています。
2つを並べると、一目瞭然です。
| 条件 | ベネズエラ(前半) | イラン(後半) |
|---|---|---|
| 米国からの距離 | 近い | 遠い |
| 防空能力 | ほぼゼロ | 40年間の独自開発 |
| 軍の忠誠度 | 内部崩壊(CIA工作) | 革命防衛隊の結束 |
| 対米戦争準備期間 | なし | 数十年 |
| 地下施設 | なし | 大規模な分散型地下工場 |
| 反撃能力 | なし | ミサイル・ドローン数千発 |
| 作戦時間 | 約150分 | 1ヶ月超えても未了 |
第2章:なぜベネズエラは150分で落ちたのか
150分で落ちた。
これは、
アメリカの実力ではなくて
相手の弱さです。
先程の表のとおりですが、
ベネズエラには
地下施設がありませんでした。
ミサイルもドローンも、
大量には持っていませんでした。
軍はCIAに切り崩されていました。
ヨーロッパの国際政治メディア
モダン・ディプロマシーは
こう分析しています。
「ベネズエラは政権転覆の予行演習だった」
150分で勝てたのは、
相手がベネズエラだったからです。
それだけです。
つまり、
「勝てる相手を選んで勝った」
という話です。
しかし、
今回のイランの戦争は
1ヶ月が経っても、
全く終わっていません。
そして、
イランは未だにミサイルとドローンを
撃ち続けています。
本数は減ったとはいえ、
枯渇する気配がありません。
一方で、
アメリカ側には1日あたり
莫大な戦費がかかり続けています。
この構造については
後で詳しく書きますが、
ベネズエラでの「成功体験」を
全く異なる相手に当てはめてしまった。
そこに、
今の泥沼の入口があります。
「アメリカは強い」のではなく、
「相手が弱かった」——。
この区別ができなかったことが、
すべての誤算の起点です。
これは戦争に限った話ではありませんが、
僕自身もビジネスで
同じような失敗をしたことがあります。
一度うまくいった方法を、
全く違う環境でそのまま使って
失敗しました。
規模は天と地ほど違いますが、
構造は同じだなと思いました。
「前回うまくいったから」
は、最も危ない判断材料です。
第3章:イランは「全部わかっていた」?
どうやらイランは、
今回の米国、イスラエルの攻撃が
始まったことに
驚いていなかったようです。
CNNが開戦9日前の2月19日に
報道しています。
「イランは攻撃に備えて軍の準備を加速させている」
ミサイル施設の修復、
核施設の地下埋設、
退役軍人の安全保障ポストへの配置——。
全部、やっていました。

ベネズエラが陥落した翌日の1月4日、
イラン外務省が
即座に非難声明を出しました。
「次は自分たちだ」と、
その瞬間に理解していたのです。
CNNは1月7日、
こんな見出しを出しています。
「ベネズエラが崩れる中、イランは不快な鏡を見ている」
つまり、
ベネズエラの姿に
「明日の自分」を見た——
ということです。
なぜイランはここまで
徹底的に準備できたのか。
それは歴史から学んでいたからです。
イラクの教訓
2003年、
イラクは大量破壊兵器の廃棄プロセスと
国連査察への協力——。
それでも結局、侵攻されました。
リビアの教訓
2003年、
カダフィは核計画を全面放棄しました。
米英が安全を保証しました。
しかし2011年、
NATOがリビアを爆撃しました。
カダフィは路上で殺害されました。

それらを近くで見てきたイラン。
「約束を守ったとしても結局は破られ最終的には潰される。」
これが、
リビアとイラクから学んだ、
イランの結論なんだと思います。
第4章:だから停戦しない
たとえ、
アメリカの停戦条件に応じたとしても
約束は覆される。
リビアが、イラクが、
それを証明しています。
イランはそれを
分かっているからこそ、
イラン国会議長ガーリバーフは
3月10日、こう言っています。
「戦争→停戦→戦争のサイクルを受け入れない」
アラーグチー外務大臣も
3月15日の記者会見で
こう言っています。
「停戦を望んでいないのは、戦争を続けたいからではない。今度こそ、敵が二度と攻撃を繰り返そうと思わない形で終わらせなければならないからだ」
約束を守ったとしても
最終的に潰される。
だから停戦交渉にも応じません。
だから核開発を手放しません。
だから戦い続けます。
これが構造です。
そしてイランには、
戦い続ける「意志」だけでなく、
戦い続けられる「仕組み」もあります。
40年間の制裁下で、
分散型の生産体制を構築しました。
イラン側のドローン、
シャヘド1機のコストは、
2万〜5万ドルです。
逆にアメリカ側の迎撃ミサイル、
パトリオット1発は
370万ドルです。
74倍から185倍のコスト差です。
このコスト構造の詳細は
こちらの記事で
詳しく書いています。
約40年間にもおよぶ経済制裁は、
イランを弱くしませんでした。
逆に分散させ、強くしました。
制裁をかけ続けた国が、
その制裁が生んだ強さと戦っています。
第5章:数字が語る「泥沼」
ベネズエラのときは
150分で終わったので、
米軍の死者はでておらず
民間人の被害も最小限でした。
ですが、イランでは
全く違う数字が並んでいます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 戦費(30日累計) | 200億ドル |
| ホルムズ海峡 | タンカー通過量92%減 |
| イランの反撃 | 弾道ミサイル414発+ドローン1,914機+巡航ミサイル15発 |
| 死者:米軍 | 13名 |
| :イスラエル | 14名(民間人12名+兵士2名) |
| :イラン | 民間人1,443名以上+軍人推定5,300名以上 |
| :湾岸諸国合計 | 108名(UAE 11名+クウェート2名+イラク96名) |
開戦から12日間で
165億ドル。
日本円で約2兆4,000億円です。
最初の6日間は
1日約19億ドルのペースでした。
トマホーク巡航ミサイルを
1発350万ドルで
大量に撃ち込んだからです。
その後も1日約5億ドルのペースが続き、
1ヶ月で200億ドルを超えました。
日本円で約3兆円。
しかもアメリカの財政は
すでに火の車です。
2026年度の財政赤字は
1.85兆ドル。
収入より33%多く使っている国が、
さらに借金を重ねて
戦争をしています。
ペンタゴンは議会に
追加で2,000億ドルの
補正予算を要求しました。
日本円で約30兆円。
日本の防衛費の約4年分です。
さらに、
兵器の供給も、
じわじわと問題が表面化しています。
迎撃ミサイルの在庫が深刻です。
THAAD迎撃弾は、
2023年8月以降、
新規納入がありません。
次の納入は2027年4月の予定です。
増産しようとすると、
原材料のガリウムとゲルマニウムが
必要になります。
中国が世界供給の80%を
支配しています。
敵対国から原材料を買わないと、
迎撃ミサイルを増産できない。
この構造が、
すでに成立しています。
これだけの数字を見ると、
アメリカが楽にイランに勝てるとは
とても考えづらい。
だからこそ、
この戦争は長引くと僕は見ています。
第6章:世論が「内側から」崩している
軍事的に苦戦しているのは
間違いありません。
しかし、
それ以上に深刻なのは政治です。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| トランプ全体支持率 | 約43%→36%(就任以来最低) | ロイター/イプソス 3月23日 |
| イラン攻撃支持 | 約3人に1人 | ロイター |
| 地上戦への支持 | 20%(70%以上が反対) | 複数の世論調査 |
| 「戦争で米国は安全になる」 | 26% | 各種世論調査 |
| 「長期的に危険になる」 | 46% | 各種世論調査 |
戦争が始まるとアメリカでは通常、
「旗の下に団結する」効果が働きます。
ラリー・アラウンド・ザ・フラッグと
呼ばれる現象です。
支持率が上がるのが普通です。
しかし、
ニューヨーク・タイムズ(3月28日)の
分析によれば、
独自計算で支持率は40%。
「旗の下の団結効果が全く起きていない異常事態だ」
と表現しています。
そしてここが重要なのですが、
この世論の崩れは、
偶然ではない可能性があります。
米メディアThe Hillは3月30日、
こんな見出しを出しています。
「計算してみろ——トランプは重要なタイムラインの節目を迎えた」
トランプは開戦当初、
「4〜6週間で終わる」と
示唆していました。
しかし1ヶ月が過ぎ、
その先には
2026年11月の中間選挙が
控えています。
つまりトランプには、
「政治時計」があるのです。
中間選挙までに成果を出せなければ、
共和党は議席を失い、
トランプ自身の
政治的な求心力も失われる。
アルジャジーラも
3月4日の分析記事で
こう指摘しています。
「イランへの攻撃は、トランプとイスラエルにとって中間選挙の審判になりうる」
イランはおそらく、
この時計を読んでいます。
軍事的に勝つ必要はない。
トランプの政治的な
タイムリミットまで
持ちこたえればいい。
そういう構図です。
実際に、
その時計は
すでに効き始めています。
LAタイムズは3月29日、
2024年にトランプ勝利を支えた
ラティーノ層(ヒスパニック系住民)が
急速に離反していると報じています。
中間選挙に直結する動きです。
保守派のコメンテーター、
メーガン・ケリーまで
公然と戦争を批判しています。
CNN(3月28日)には、
「共和党議員全員が泥沼を心配している」
という証言が掲載されています。
しかし同時に、
3月29日には米特殊部隊
(レンジャー・ネイビーシールズ)が
追加投入されています。
地上戦の選択肢を
大統領に提示するための動きです。
空爆では終わらない。
地上戦は政治的に不可能だけど
準備だけは進んでいる。
この矛盾が、
出口のなさを象徴しています。
軍事で苦戦し、
世論にも見放されつつある。
でも出口を探す動きは、
まだ見えません。
そしてその間も、
トランプの「政治時計」は
止まることなく進んでいます。
第7章:戦争のレベルが上がっている
ここまで読んで、
「でも、そのうち終わるでしょ」
と思った人がいるかもしれません。
ですが、
僕が今住んでいるロシアと
ウクライナの戦争を見てください。
この戦争も、
「すぐ終わるだろう」
と最初は言われていました。
ですが現実には
もう4年以上続いていて、
いまだに終わりが見えません。
イラン戦争も、
同じような長期戦になる兆しが
すでに見え始めています。
というのもこの戦争は、
毎週レベルが上がっているからです。
第1段階:軍事施設への攻撃
開戦直後は、
双方とも軍事施設を狙っていました。
ミサイル基地、防空施設、
革命防衛隊の拠点——。
「戦争」として
まだ常識の範囲でした。
第2段階:インフラへの攻撃
3月7日、
米国がイランのケシュム島にある
淡水化施設を空爆しました。
30の村で水が断絶しました。
イランのアラーグチー外務大臣が
Xにこう投稿しています。
「淡水化施設を攻撃して良いと言う、先例を作ったのは米国だ」
翌3月8日、
イランがバーレーンの淡水化施設を
ドローンで攻撃しました。
湾岸諸国への
淡水化施設攻撃の初の事例です。
冒頭で触れたクウェートの件も
このエスカレーションの
延長線上にあります。
インド人労働者が1名死亡しています。
僕が以前
この記事で書いた
「ドバイから水が消える日」が、
現実に近づいています。
ガーディアンが3月23日に
報じています。
「湾岸諸国の水備蓄は約1週間分のみ」
第3段階:民間標的への予告
そして3月29日、
さらに一線を越える動きが
ありました。
米国とイスラエルが
テヘラン科学技術大学を空爆しました。
これに対し、
イランの革命防衛隊(IRGC)が
声明を出しました。
「中東にある全てのアメリカとイスラエルの大学を正当な標的とする。3月30日正午(テヘラン時間)。それまでに米国が大学爆撃を公式に非難しなければ、報復する。」
対象として名指しされているのは、
・NYUアブダビ
・ジョージタウン大学カタール校
・カーネギーメロン
・ノースウェスタンなど
革命防衛隊は、
職員・学生・周辺住民に
「1km以内に近づくな」
と警告しています。
軍事施設→インフラ→大学。
標的が、
毎週エスカレートしています。
第8章:最悪のタイミングでフーシ派が参戦し、さらに泥沼に
そしてここに来て
最悪のカードが切られました。

3月28日、
イエメンのフーシ派が
イスラエルに向けて
弾道ミサイルを発射しました。
フーシ派の軍事報道官
ヤヒヤ・サレアは
こう声明を出しています。
「イスラエル南部の軍事施設に対し、弾道ミサイルによる最初の軍事作戦を実行した」
さらにこう続けています。
「イラン、そしてレバノン・イラク・パレスチナの抵抗戦線への連帯として行動した。全ての戦線への攻撃が停止するまで、作戦は継続する」
注目すべきは、
フーシ派は開戦から1ヶ月間、
あえて参戦していなかった
ということです。
アルジャジーラは
3月7日の分析記事でこう書いています。
「テヘランは全てのカードを一度に使いたくなかった。フーシ派は将来のために温存されていた」
フーシ派のリーダー、
アブドゥルマリク・アル・フーシも
開戦直後の演説では、
「全面的な連帯」を表明しつつも、
即座の軍事行動は宣言しませんでした。
イエメンの研究機関アバードの分析では、
「慎重に調整されたエスカレーション戦略——段階的に対応を構築し、まずは経済的コストを上げることで敵にシグナルを送る」
と表現しています。
つまり、
イランは「切り札」を
1ヶ月間温存していて、
このタイミングで切ってきた
ということです。
しかもフーシ派の参戦は、
ミサイルだけの話ではありません。
というのもご存知の通り、
ホルムズ海峡はすでに封鎖状態です。
そこでフーシ派は、
紅海とアフリカの角をつなぐ
バブ・エル・マンデブ海峡の
封鎖も示唆しています。

これが何を意味するか。
この海峡は幅わずか26km。
世界の石油輸送の約10%、
世界貿易の約12%が通過しています。
ここが塞がれば、
エジプトのスエズ運河へのアクセスも
断たれます。
すでにマースクやハパックロイドなど
大手海運会社は、
船舶を南アフリカ最南端
喜望峰回りに迂回させ始めています。
輸送日数が10〜14日増えます。
ホルムズが塞がったから
紅海に迂回したら、
そっちも塞がれかねない。
石油の逃げ道が、
なくなりつつあります。
アメリカとイスラエルにとって、
これは最悪のタイミングです。
戦費が1日5億ドルで燃え続け、
支持率が過去最低を更新し、
出口が見えない中で、
新しい敵が加わりました。
標的が軍事施設から
インフラへ、大学へと広がり、
当事国も増え続け、
戦線もペルシャ湾から
紅海にまで広がっている。
この戦争は明らかに、
収束ではなく
拡大していると言えると思います。
おわりに
開戦当初、
トランプ大統領が描いていた絵は
おそらくこうでした。
ベネズエラのように、
サクッと終わる。
1〜2週間で終われば、
支持率が上がる。
イスラエルからも感謝される。
いいことづくめ。
そうなるはずでした。
2月28日の開戦直後、
アメリカのニュースは
「何千ヶ所ものイランの施設やミサイル発射台を爆撃、破壊に成功」
と報じていました。
はたから見たら、
アメリカ、イスラエルが
圧倒的に優勢に見えました。
でも、
1ヶ月経った今も、
イランのミサイルは止まっていません。
どう考えても、
あの初期の報道は
現実を正しく映していなかった。
本当に何千ヶ所も破壊していたなら、
もうとっくに、
イランからのミサイルやドローンは
止まっているはずです。
実際、
アメリカもイスラエルも
「想定より時間がかかっている」と
認め始めています。
さらに、
ドバイなど湾岸諸国からは
「勘弁してくれ」と言われ、
ホルムズ海峡の封鎖で
世界中にインフレが波及し、
米国でのトランプ大統領の支持率は
就任以来の最低を更新し、
1日5億ドルが燃え続けています。
ここまで来ると、
成果を出さずに
撤退するわけにはいきません。
ただ、
地上戦は政治的に
難しいんじゃないでしょうか。
多くのアメリカ兵の犠牲を出したら、
それこそトランプ大統領の
政治生命が終わりかねません。
かといって、
成果なしでは引くに引けない状況。
本当に、
進んでも地獄。
引いても地獄。
そしてイランは、
どうやらそのことを
分かっているように見えます。
停戦に応じない。
交渉のテーブルにつかない。
ミサイルを撃ち続ける。
ずるずると長引かせることで、
アメリカとイスラエルを
さらに深い沼地に
引きずり込んでいく——。
もちろんイランだって、
無傷ではありません。
民間人だけで
1,000名以上の犠牲者を出しています。
インフレもひどい。
ただ、
僕が数年前にテヘランに行ったとき
すでにインフレがひどくて、
ゼロの数が数えきれないお札を
分厚い束で受け取りました。

イラン国内の実際の
取引レートを掲載している
「Alanchand(الان چند)」
という掲示板サイトによると、
1ドル=約1,588,000リアル
500,000リアル ÷ 1,588,000
= 約0.31ドル(約45円)
僕が訪れた
ちょうど3年前と比較すると、
| タイミング | 500,000リアル |
|---|---|
| 2023年3月(訪問時) | 約156円 |
| 2026年3月(現在) | 約45円 |
たった3年で約3分の1以下に下落。
これがイランのリアルです。
でも、
イラン国民はみんな
ひどいインフレや混乱に
慣れているなと感じました。
物価が2倍になろうが3倍になろうが、
「またか」と受け入れる。
僕が今住んでいるロシアも
似たようなものです。
ここ数年で
物価は2倍以上になりましたが、
みんな半ば諦めで、
あまり文句を言いません。
一方、
アメリカでは
ガソリンが少し上がっただけで
支持率が動きます。
この「痛みへの耐性」の差が、
消耗戦ではそのまま
持久力の差になります。
そういう意図が
見え隠れしているように、
僕には映ります。
もちろん、
最終的にどう着地するかは
まだ誰にもわかりません。
ただ、
「終わる気配がない」ではなく、
「終わらせない理由がある」——。
そう見えてきたとき、
この戦争の構造が
少し違って見えてくるはずです。
この構造を、
自分自身の体験も含めて
さらに深掘りした記事を、
メンバー限定で公開しています。
よろしければどうぞ。
