あなたは
心のどこかで、
こんな「小さな罪悪感」を
抱えて生きていませんか?
「ああ、また隙間時間を
無駄にしてしまった……」
電車の待ち時間の5分。
エレベーターを待つ1分。
レジに並んでいる3分。
世の中のビジネス書や
意識の高いインフルエンサーたちは
口を揃えてこう言います。
「成功者は1秒も無駄にしない」
「隙間時間で単語を覚えろ」
「その積み重ねが、将来の差になる」
この言葉を聞いて、
「よし、今日から全ての
隙間時間を活用してやる!」
と意気込み、
そして3日後には挫折して、
スマホでSNSを眺めている自分に
自己嫌悪する……。
そんな経験が
一度はあるはずです。
正直に言えばこれは、
「死ぬほどの悩み」では
ありません。
隙間時間を活用できなかった
からといって、
明日の食い扶持に
困るわけでもないし、
誰かに怒られるわけでもない。
「まあ、いっか。
自分は要領が悪いタイプだし」
そうやって
苦笑いして流せるレベルの話です。
でも、
だからこそ「厄介」なのです。
この悩みは、
あなたの心の中で
「バックグラウンドアプリ」
のように起動し続け、
あなたが気づかないうちに、
スマホの電池(エネルギー)を
じわじわと消耗させています。
「自分は効率的に動けない人間だ」
「時間を無駄にしているダメな奴だ」
そんな微弱な、
しかし絶え間ない「自己否定」が、
あなたの本来持っている
「爆発的な集中力」や
「成功する可能性」を、
静かに、確実に
奪っているとしたら?
今日は、
僕があえて
「効率的なバス移動」を選び、
そして壮大に失敗した話をします。
そして、
その失敗から見えてきた
「隙間時間の呪い」と、
そこから抜け出すための
「戦略的開き直り」
についてお話しします。
もしあなたが、
「頑張っているのに
なぜかいつも疲れている」
「成果が出そうで出ない」
と感じているなら
この記事を最後まで読んでください。
犯人は、
あなたの能力不足ではありません。
あなたが良かれと
思ってやっている、
「隙間時間の活用」
そのものかもしれません。
第1章:マイナス15度の「バス実験」
普段、僕はブログのネタや
ビジネスの構想を練る時、
「90分間ひたすら歩き続ける」
というスタイルをとっています。
冬の気温マイナスの
カザンの街をただひたすら歩く。
信号以外で止まることはありません。
この、
「90分間の連続したリズム」
が、僕を深い思考の海
(フロー状態)へと
連れて行ってくれます。
歩き終わる頃には、
音声入力で1万文字近くの
「濃いアイデア」が
完成しているのが常です。
ですが、
今日はふと思いました。
「たまには、違う方法を
試してみようか」
今回はいつもの場所ではなく、
「別の市場」
へ行ってみることにしました。
そこで、
あえて「バス」
を使ってみることにしたのです。
今回のルートはこうです。
1. 徒歩(20分): バス停まで歩く。
2. 待ち時間(10分): バスが来るのを待つ。
3. バス移動(30分): 目的地まで揺られる。
合計60分。
いつもの90分散歩より
時間は30分ほど短くなります。
でも、
「バスなら座っていられるし
自分で運転するわけでもない」
「時間は短くても
その間に何かいいアイデアが
ひらめくんじゃないか?」
そんなふうに、
いつもと同じような効果を
期待していたんです。
でも、
結果は違いました。
家を出て
バス停に向かった瞬間から、
僕の脳みその歯車が
狂い始めたのです。
第2章:思考の「寸断」とエネルギー漏れ
最初の10分。
ここは順調でした。
雪道を歩きながら
少しずつ脳のエンジンが
暖まってくるのを感じます。
「よし、今日のテーマは
どうしようか……」
思考が深まりかけ、
集中モードに入りそうになった
その瞬間。
「到着」
バス停に着いてしまいました。
ここで強制的に思考が止まりました。
マイナス15度の世界では
「歩いている時」は平気でも、
「止まった時」に
死ぬほどの寒さが襲ってきます。
体の芯まで冷える感覚。
生存本能が
「寒い!動け!」と叫びます。
僕はポケットからスマホを取り出し
震える手でマップアプリを開きます。
「バスはあと何分で来る?」
「どの番号のバスに乗ればいいんだ?」
「GPSの反応が遅いな……」
この時点で僕の思考は
完全に死にました。
さっきまで組み上がりかけていた
「ブログの構成」や
「ビジネス、この先のアイデア」は、
「寒さ」と「GPSの確認」という
強烈なノイズによって、
跡形もなく吹き飛んでしまったのです。
そして、バスが来ます。
乗り込みます。
暖かい車内。
座席に座る。
「よし、ここから30分ある。
気を取り直して考えよう」
そう思ってスマホのメモを開きます。
しかし、全く言葉が出てこない。
なぜか?
頭の片隅に、
常に「雑念」が居座っているからです。
「降りるバス停を間違えたら
この極寒の中で立ち往生だぞ」
「次はどこだ?」
さらに、周りには乗客がいます。
普段の散歩コース
(広大な無人地帯)なら、
大声で独り言を録音しながら
思考を整理できます。
でも、
密室のバスの中ではそうはいかない。
電話をしているフリをして
小声で話すのが限界です。
1. 歩く(思考ON)
2. 止まって待つ・寒さに耐える(思考OFF)
3. GPSを確認する(事務作業)
4. バスに乗る・周りを気にする(受動・警戒)
こうやって、
たった数十分の間に
脳のモードをバチバチ
と切り替えるたびに、
集中力の「文脈」が
ブチブチと切断されていく
そんな感覚がありました。
結果、
市場に着いた時
僕の手元には何が残っていたか?
「ゼロ」です。
移動はしました。
体は運びました。
でも、
クリエイターとして一番大切な
「アイデア」や「熱量」は、
何ひとつ生まれていませんでした。
結果として、
最も非効率な「無の時間」を
過ごしてしまったのです。
第3章:なぜ「隙間時間」は無駄なのか? 科学的な証明
「それは森さんの集中力が
足りないだけじゃないの?」
そう思うかもしれません。
でも、
この失敗が
あまりに悔しかったので、
帰宅後にいろいろと
調べてみました。
すると、
驚くべきことに
僕が感じた、
「脳の不快感」や「思考停止」は、
科学的に完全に説明がつく現象
だったのです。
僕らが、
「隙間時間」で成果を出せないのには
明確な2つの理由があります。
① 「注意残響」の呪い
ミネソタ大学の
ソフィー・リロイ准教授が提唱した概念に、
「注意残響」
というものがあります。
これは、
「人間がAという作業から
Bという作業に移った時、
脳の注意力のすべてが
即座に移動するわけではない」
つまり、
会議が終わった直後に
メールを書こうとしても、
頭はまだ会議のことを
考えている状態。
という理論です。
僕の場合で言えばこうです。
「思考(A)」から
「バスの確認(B)」に移った時、
脳のメモリの半分くらいは、
まだ「思考(A)」に残ったままか、
あるいは「バスの確認(B)」
を引きずったまま
「思考(A)」に戻ろうとします。
つまり、
バスの中で
「さあ考えよう」と思っても、
脳内には、
「さっきの寒さ」や「降りる場所の心配」
というゴミ(残響)が
こびりついていて、
脳のパフォーマンスが
常に50%以下しか
使えない状態になっていたのです。
これでは深い洞察なんて
生まれるわけがありません。
② 「23分の法則」と脳のアイドリング
さらに決定的なのが、
カリフォルニア大学の
グロリア・マーク教授の研究です。
彼女の研究によると、
「人が一度集中力を切らすと
再び元の深い集中状態に戻るまでに
平均で23分15秒かかる」
といいます。
23分です。
数秒、数分ではありません。
これを知った時
僕は鳥肌が立ちました。
僕がいつも、
「歩き始めて20分〜30分くらいで
アイデアが出始めるな」
と感じていた感覚と
完全に一致していたからです。
人間の脳は、
パソコンのように
「スイッチON」で、
すぐにトップスピードが
出るわけではありません。
重たい暖炉のように
火をつけてから部屋が暖まるまで
(ゾーンに入るまで)に、
どうしても20分〜30分の
「助走(アイドリング)」
が必要なのです。
この科学的事実を、
「隙間時間活用」
に当てはめてみてください。
「15分の隙間時間を活用しよう!」
これがいかに無意味か
わかりますか?
15分という時間は、
「集中モードに入るための助走」
すら完了しない時間です。
エンジンが暖まりかけ、
ようやく「お、いけるぞ!」
と思った瞬間に、
「はい、時間です。次の予定です」
と強制終了させられる。
これは脳にとって
拷問に近いストレスです。
そして、
僕の脳(そしてあなたの脳)は
優秀なのでそのことを
本能的に知っています。
「どうせ今から頑張っても
ゾーンに入る前に終わるでしょ?」
「なら、エネルギーを
使うだけ無駄だから
アイドリングすらしないでおこう」
今日、
バスの中の僕が
「何も考えられなかった」のは
怠慢ではありません。
脳が、
「無駄なエネルギー消費を防ぐための
セキュリティー機能」
を発動させ、あえて
思考を停止させていたのです。
第4章:僕は「コツコツ」を捨てた。40分の徒歩が教えてくれたこと
あまりにも頭が働かないので
僕は帰りのバスを
途中で降りました。
家の最寄りのバス停ではなく
ずっと手前の駅で降りて、
そこから40分かけて
歩いて帰ることにしました。
「効率」を捨てて
「非効率」を選んだのです。
すると、どうでしょう。
歩き出した瞬間、
一気に言葉が溢れ出してきました。
今、
あなたが読んでいるこの記事の原案も
その40分の帰り道で
一気に録音したものです。
なぜ、歩いたら復活したのか?
理由は単純です。
「誰にも邪魔されない
連続した時間の塊」
があったからです。
「家に帰るだけ」なので
バス停を気にする必要もありません。
GPSを見る必要もありません。
ただ、足を動かし続けるだけ。
もし40分で考えがまとまらなければ
家の周りをあと20分
グルグル歩けばいい。
誰にも急かされない。
中断されない。
この「終わりの見えない安心感」
があったからこそ、
僕の脳は、
「よし、そろそろ本気出すか」
とエンジンをかけ、
23分の壁を超えて深い思考の海へと
潜ることができたのです。
この体験で、僕は自分の
「勝ちパターン」
を完全に理解しました。
僕は、
世間で言われるような
「コツコツタイプ」ではありません。
毎日10分ずつ単語を覚えるとか
隙間時間で少しずつ記事を書くとか、
そういう器用なことはできない。
その代わり
一度エンジンがかかれば、
誰よりも深く、誰よりも熱く
何時間でも没頭し続けることができる
「一極集中タイプ(スプリンター)」
なのです。
最後に:じわじわと人生を蝕む「バックグラウンドアプリ」を切れ
話を最初に戻します。
「隙間時間を活用できない」
という悩みは
死ぬほどの悩みではありません。
でも、
「自分は時間を無駄にしている」
「自分はコツコツ
できないダメな人間だ」
という微弱な自己否定は、
あなたのエネルギーを
確実に奪っています。
それはまるで、
使っていないのに裏で動き続け
バッテリーを食い荒らす
スマホアプリのようなものです。
だからこそ、僕は今日
ここで高らかに宣言します。
「僕は、隙間時間の活用を諦めます」
もう、無理にやろうとしません。
時間が30分しかないなら
中途半端に仕事はしません。
ぼーっと考え事をするか
音楽を聴くか
いっそ寝ます。
そして、
その浮いたエネルギーを全て、
1日の中で確保した、
「絶対に誰にも邪魔されない
90分のブロック」
に注ぎ込みます。
これが、僕なりの
「戦略的開き直り」です。
もし、
あなたが僕と同じタイプなら、
今日から「隙間時間」という呪縛を
解いてあげてください。
「ああ、また時間を無駄にしちゃった」
と悩むのは、もう終わりです。
それは無駄にしたのではありません。
来るべき「集中の時間」のために
脳のバッテリーを温存したのです。
10回の隙間時間(計150分)で、
中途半端に消耗するよりも、
1回の深い90分で、
世界を変えるようなアイデアを出す。
それが、
僕らのような不器用な人間が、
この効率化社会で生き残るための
唯一にして最強の戦略なのですから。
明日からも僕は、
「効率的なバス」には乗りません。
周りに「物好きだね」と
笑われようとも、
マイナス15度の風を受けながら
90分間、自分の足で歩き続けます。
それが、
今の僕にとっての
いちばん静かで、
いちばん確かな、
「最短ルート」なので。
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